妊娠出産、不妊治療にまつわるアスペルガー

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デイリー新潮の、星乃林丹さんの「私ってカサンドラ!?」の手記シリーズは、アスペルガー以上の何かではないかと思うほどの目に余る内容だが、この記事は、とても共感でき、私にも似たような経験がある。

 

私は2人目不妊で長いこと悩んでいた時期があった。私の2人目へのチャレンジを、「夫婦の問題」として捉えず、全く寄り添ってくれない夫に違和感を抱えつつも、私は、私にできる様々なことに挑戦していた。

 

体外受精もその一つ。

 

近場で評判の高かったクリニックに毎日通い、ホルモン注射を打ち、辛い思いをしながら、やっと採卵に漕ぎ着けた。年齢のこともあって、AMHの値が低く、やっとのことで採れた卵子と、夫の精子体外受精する日が来た。その日は、偶然にも私の誕生日だった。

 

自分の誕生日なのにも関わらず、夫を喜ばせようと、スペイン料理のお店でランチをとった。普通に考えたら、私の誕生日を、そして、受精卵がうまく育ってくれるように願いお祝いをするべき日だ。そこで夫は、明らかに体を震わせながら、緊張した面持ちでこういった。

 

「こ、これで、2人目の子供ができてしまうということなのか。。。?」

 

私は意味が分からなくて、なんてことをいう人なんだろう、とも思わず、その言葉通りを受け止めた。今思えば、傷つく心を防御していたのだと思う。当時の私は、夫の正論(的な言動、今思えばアスペなりのマイルール)や、解決法みたいな部分に洗脳されていた。要するに、夫のいうことは全て正しい、と思っていたので、そう言われても傷つく、おかしい、と思うことはなかった。そこまで私も異常だったのだ。自分を大切にできないところまで至っていた。

 

ただこの、不可解な言動は、ずっと私の心に残っていた。

 

のちに、夫がアスペルガーと気付いた時、専門家の方にこの件を検証してもらうと、典型的なアスペルガーの反応だという。

 

アスペルガーの人は、相手がどう思うかという思考回路がないので、それよりもまず、例えばもう1人子供ができたらこの先、金銭的なストレスや問題が増える、という不安がまず立ちます。そこからの言動でしょう。」

 

あの時、私は「傷ついた」と感じてよかったのだが、アスペの夫と長年一緒にいて、相手の幸せや笑顔を軸に生きてきてしまったので、そこに気づくこともできなかった。依存的な愛だ。

 

また、1人目の出産の後、コンドームの大箱をプレゼントされたことがある。

 

「子供は1人でいい。今はとにかく欲しくないので。」

 

とのことだったが、この時も私の気持ちは麻痺していて、ただ夫の理解不能なプレゼントに混乱するのみで、愛を感じられず、セックスもあまり応じることができなかった。今思えば、それは私の気持ちは対処できていなくても、体が自然と無になり、拒否反応を示していたのだと思う。

 

のちに夫は、

 

「あの時、子供が欲しいと言っていたくせに、できなかったのはセックスに応じなかったお前のせいだ。普通のカップルなら、大箱のコンドームくらい、すぐになくなるんだ。しなかったお前が悪い。」

 

と言い放った。

 

さらに、

 

「お前が、アスペルガーの検査をしろと言うことで思い当たることがある。前に、俺の精子をとって、俺が正常かどうか試したことがあっただろ?あれと一緒だな。」

 

男性の精子検査は、不妊治療の際に不可避な検査だ。因果の因、が理解できないアスペルガーの症状を表していて、世界に「僕」しかいないことがわかって悲しいくらいだ。かわいそうにすら思ってしまう…

 

たくさんある、こんなエピソード。夫がアスペルガーとわかった今は、むしろ愛おしく思う。そんな私もまた病的なんだろうけど、相手の不可解な脳回路を理解したいとすら思う。